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私が携わってきたのは主に超音波診断装置の開発です。身体に超音波を発射し、体内組織からの反射エコーを画像化する医療機器ですね。膵臓、胆のう、肝臓、心臓、消化器系などあらゆる臓器の診断に使用します。今では頸動脈を計ることで心筋梗塞の具合など、さまざまなことを診ることができます。
超音波診断装置は医療現場で活躍する機器ですので、厳しい規格が求められます。たとえば、機械から出る不要な電波を抑えるEMC(Electro-Magnetic Compatibility)は高度な技術です。携帯電話の微量な電波が心臓ペースメーカーに対して影響を与えると言われますが、同じように超音波診断装置が手術室にある他の機械に影響を与えてしまうと不都合が生じます。逆に装置自体も他の機器からの電波を受けて誤動作しないようにする必要もあります。電波を"出さない"、"受けない"ことへの追求が、苦労したポイントのひとつでした。今でこそ、日常生活に電子機器が増えて注目されている技術ですが、パナソニックの中でも私たちの部門が法制化よりかなり早い時期にEMCについての研究をはじめたと思います。
私が特に印象に残っているのは、経膣超音波診断装置という女性の身体の中に入れて胎児などを診断するための機器の開発です。この機器を使うと、赤ちゃんの心臓の動きや活動の様子を診ることができます。それまでは体の外から診なければいけなかったんですが、体腔内から診断すると非常に鮮明な画像が得られます。こういった新しい診断法の確立にほんの少しですがお役にたてたことを大変うれしく思います。おかげさまで、この装置は北米放射線学会で1988年の医療機器世界3大発明に選出されました。
経膣超音波診断装置は今も医療現場で動いており、お産された方でしたら一度はこの診断を受けていると思います。同僚の女性エンジニアが切迫流産になりかけた時、救急車で搬送された病院で使用された診断機も、私たちが開発した経膣超音波診断装置だったそうです。おかげで子供の命も自分の命も助かったという話を聞いたときは、開発に携われて良かったと思いました。
余談ですが、私も自分で開発した機器の実験中に胆嚢ポリープを見つけました。実験室で画像評価のために自分の体内を見ていると「これ何!」とか言ってみんな大騒ぎになりましてね(笑)何事もなかったので今でこそ笑い話です。
OEM先企業との共同開発拠点の立ち上げでシアトルに駐在したこともあります。日本の設計者と現地の設計者が一緒に企画・設計し、それをもとに日本で医療機器を製造。その後、シアトルに送られて来た商品を評価しアメリカの病院に出荷していました。この写真は最初の商品を発送する直前です。感慨深いひとときでした。
このときチーム全員に配られた記念のボールペンがあります。商品名と"World Wide Introduction1995"と書いてあります。ずっと使っていたので年季が入っていますね(笑)


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パナソニックでエンジニアとして働くことの意義やメリットは多々ありますが、ここでは私の経験を踏まえて4つに絞ってお話します。
私が皆さんにお伝えしたいのは、やはり自分の強みであるコアコンピタンスを確立していただきたいということです。日本の将来は皆さん一人ひとりのコアコンピタンスにかかっていると思います。
そのためには、与えられた環境を精一杯生きることです。そうしないと自分の弱みやできないことさえわかりません。自分のできないことがわかれば、逆にできること、つまり自分の強みが見えてくるからです。
そして、その分野の第一人者になることを目指して技術を研鑽してください。ただし、先端技術や特徴ある技術の修得に偏るあまり、基礎技術が疎かになってしまわないようにすることも大切です。穴と一緒ですね。深い穴を掘ろうと思ったら幅を広くしないと掘れない。コアコンピタンスを確立しようとするほど技術は深くなっていきますが、そのためには幅広い知識、人間としての幅が必要になってきます。専門分野だけではなく周りも見える視野のひろいエンジニアになってもらいたいです。
そして何より、振り返ったときに人に誇れる仕事をしてもらいたいです。私自身、パナソニックで医療機器の開発を通じて、僅かですが社会に貢献できたことを誇りに思っています。いろんなことに挑戦させてもらえましたし、何にも変えがたいすばらしい時間を過ごすことができました。
もし今の自分が若かったら?・・・やっぱりもう一度パナソニックで働きたいですね(笑)
赤石 智
1978年 松下電器産業株式会社入社後、1979年 松下通信工業株式会社に配属。約30年間、電気系技術者として主に医療機器(超音波診断装置)の事業に従事する。松下電器産業株式会社 ヘルスケア社 社長、パナソニックエクセルテクノロジー株式会社 代表取締役社長などを歴任し、現在パナソニックエクセルスタッフ株式会社 技術担当 取締役。自身の経験を活かし技術者の目線からエンジニアの人材派遣に尽力する。
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